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凪の続き─相手の気持ち鑑定録─
彼は、優しい人でした。いつも穏やかで、言葉を選ぶように話す人。だからこそ、私は彼の“本音”を見失ってしまいました。連絡はあるのに、心の距離が遠い。そんな日々の... -
灯りを育てる恋【#6】─いつか一緒に探す家─
夕方の空は、昼と夜のあいだで揺れていた。オレンジがゆっくりと淡くなって、街の灯りが一つずつ点いていく。 彼と並んで歩く帰り道は、特別な場所ではない。よく通る道... -
灯りを育てる恋【#5】─あの日の私へ─
窓際の席に、午後の日差しがやわらかく差し込んでいた。湯気の立つカップの向こうに、彼がいる。いつも通りの姿なのに、どこか前より近い。 テーブルの上には、二人で使... -
灯りを育てる恋【#4】─同じ言葉にたどり着くということ─
仕事を終えた帰り道、夜の空気は少し冷たかった。駅前のロータリーでは、タクシーが何台か並んでいて、そのヘッドライトの光が、ぼんやり滲んで見える。 電車に揺られな... -
灯りを育てる恋【#3】─小さな台所で、生まれた灯り─
日曜の夜、ベッドにうつ伏せのまま、天井を見ていた。 “将来の夢”って、なんだろう。 彼と暮らす未来は、ぼんやり思い描ける。隣で笑っている姿も浮かぶ。でもその先を... -
灯りを育てる恋【#2】─私の中心に灯る灯り─
昼休み、社内カフェの窓際。薄いカーテン越しの光がテーブルに落ちていて、その上で私の指先のローズ色が静かに透けていた。 「今週、時間あったら会えない?」 スマホ... -
灯りを育てる恋【#1】─差し出していたのは、私の時間─
「芽衣、今日昼どうする?」声をかけられて、顔を上げる。まいちゃんが、コートを腕に引っかけながら私を見ていた。 「カフェ行かない?」私はいつもの調子で笑って返す... -
彼の沈黙に恋を学ぶ【#6】─灯りの場所─
冬と春の境目は、いつも気づかないうちにやって来る。駅へ向かう道の欄干に、ふいに並ぶ小さな新芽。冷たい空気の底に、柔らかな匂いがまざっている。 その朝、私は目覚... -
彼の沈黙に恋を学ぶ【#5】─あの頃の私へ─
冬の気配が少しずつ街を包みはじめた。テニスコートの木々が葉を落とし、冷たい風が砂を巻き上げている。 大会から数週間が経った。 彼とはメッセージのやりとりが続い... -
彼の沈黙に恋を学ぶ【#4】─好きと伝えた夜─
秋が深まる。 朝の空気が冷たくなり、街路樹の葉が色づき始めていた。テニスの大会まで、あと一週間。 職場でもサークルでも、その話題ばかりが飛び交っている。 彼とは...