凪の続き─音信不通鑑定録─

彼の連絡が途絶えたのは、ほんの数日だったのかもしれません。
でも私には、それが永遠のように感じられました。
「仕事が忙しい」という言葉を信じたい気持ちと、
どこかで何かが変わってしまった気配の間で、心が揺れていました。

そんなある夜、私は初めて電話占いのボタンを押しました。

相談概要

彼の沈黙が教えてくれた不安

「午後から外回り」
「今日もバタバタ」
──そんなメッセージのあと、彼の既読は途絶えました。

最初の一日は“忙しいのかな”と思えたのに、二日、三日と経つうち、
私の頭の中ではあらゆる可能性が浮かんでは消えていきました。

夜になると、スマホを手にしたまま画面を見つめていました。
誰かの通知音が鳴るたび、胸の奥が跳ねる。
そして、鳴らない時間の静けさが、私を責めているようでした。

「もしかして、私だけが本気だったのかな。」
そんな思いがよぎった瞬間、涙よりも先に“怖さ”がやってきました。
私はその夜、思い切って電話占いのサイトを開いたのです。

電話越しに届いた静かな声

受話器の向こうの声は、驚くほどやわらかくて、
それだけで胸の緊張が少しほどけていくのがわかりました。

私はこれまでの経緯を話しました。
彼の既婚を知りながらも惹かれてしまったこと。
それでも「連絡が来る」ことを理由に、自分を安心させていたこと。

しばらく沈黙があり、占い師さんは静かに言いました。

私は、はっとしました。
彼を責めたいわけじゃない。
けれど、返信がないことで“自分の価値まで揺れていた”のだと。

その言葉が、胸の奥に静かに落ちていきました。

“待つ”ではなく“見つめる”時間へ

鑑定を終えたあと、私はノートを開きました。
ページの上に、「信じる」という文字を書いた。
震える手で、それをなぞりながら思いました。

“信じる”とは、ただ待つことじゃない。
“見えない時間の中でも、自分を疑わないこと”。

あの日の言葉が、今も残っています。

それからの私は、スマホの通知を気にする時間を減らしました。
代わりに、自分の好きな香りを見つけたり、
散歩の途中で空の色を写真に撮ったり。
“私の世界”を、少しずつ取り戻していきました。

不思議なことに、彼からの連絡が戻ったとき、
前ほど心が揺れなかったのです。
それは諦めではなく、静かな“整い”の感覚でした。

占い師からのひとこと

人を想うとき、私たちは無意識に“結果”を求めてしまいます。
けれど、愛は結果ではなく“在り方”です。
真奈さんは“待つ女性”から、“在る女性”へと変わりました。
その静けさが、きっと次の扉を開いてくれますよ。

その後の私

彼の返信が来る・来ないに一喜一憂していた日々。
それは、彼を見ていたようで、
実は“彼に映る自分”ばかりを見ていたのだと思います。

今は、静かな夜に香りを灯しながら、
「私は私を大切にできているかな」と問いかけます。
不安を完全に消すことはできないけれど、
その不安を抱いたままでも、生きていける──
そう思えるようになったことが、いまの私の小さな誇りです。

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